視覚障害者の空間認知および概念形成においては、触覚、聴覚などの他感覚モダリティによる代替と情報の次元という考え方が重要である。点字は6点の2次元パターンで1次元の文字情報を表現しており、触図は2次元の図的表現による実物や概念の写しである。しかし、3次元の立体触察ツールは、教材用実物模型の他、博物館展示品等などに限られているのが現状である。
造形作家の松尾光伸は、白銀比等の幾何学的構成原理に基づくオリジナルな多面体ブロックの組み合わせによる「情報造形(INFORMART)」を提唱し、海外の大学で長年にわたり芸術系学生の指導に当たってきた。その傍ら、触覚のみによる造形活動をたすける触形譜等の組み立て支援ツールを開発し、視覚障害者にも立体造形活動を楽しめる数々の触察造形立体ブロックを考案してきた。
2021年に松尾が筑波技術大学の共同研究員となることにより、「触形(TACTILE ART)」と命名した視覚障害教育、数学、造形教育等の多様な専門を持つプロジェクト・チームがスタートした。さらに、視覚障害者における触形の文化的歴史的意義探求のために比較民俗学の研究者も参入した。
プロジェクトでは、まず松尾の立方体組み立てユニットと触形譜等を「組立式ブロック、ブロック組立セット」として筑波技術大学と松尾の共同特許として申請した。今後は、組立ブロックを用いた造形の構成原理の数学的解析と触形教育をさらに推進するための各種ツールや教育プログラムを開発・評価する。
本研究において開発される造形システムと教育プログラムが、1次元の点字、2次元の触図に続く3次元の触形として、視覚障害者のための造形教育、幾何学教育はじめ医療等にも寄与するツールに育っていくことを目標とする。